9浪アラサー早大生のコロナ奮闘記① 今回の行動の経緯

 

こんにちは、9浪はまいと申します。

 

この度、私は兵庫県庁にマスク2000枚(執筆時点での価格20万円)を寄付することにいたしました。どうしてこのような行動をとることを決意したのか、私の葛藤・思いを書き進めていきます。

 

私は9浪して夢であった早稲田大学教育学部に入り直しましたが、大学に入ってからの2年間はひたすら幸せでした。私は高校時代にいじめられ、社会人時代に正規の給料をもらえないという経験をしてきました。みなさんも、多かれ少なかれ、人生において辛い時期があったのではないでしょうか?私はそれが、10年以上続きました。中学校を卒業してからは、毎日が本当に地獄でした。人生を諦めたいと思いました。でもそれを乗り越えることができたからこそ、大学に入ってからの自分は何をするにしても喜びを感じられるようになったのです。年齢が離れているから友達ができないかもしれない、と諦めていた部分もあったのですが、幸い周囲の方々に恵まれて充実した2年間を過ごせたことに心から感謝しています。私はてっきり、この生活が後2年間、ずっと続くものだとばかり考えていました。しかし、この度の新型コロナウイルスの影響で、その願いは無情にも打ち砕かれました。8月まで、大学での授業が全面オンラインで行われることに決まったのです。

 

これは本当にショックでした。無論、このような状況でも学問ができる環境があるというのは喜ぶべきことです。しかし、友人と議論し合い、切磋琢磨しつつ高め合うのが好きだった私からすれば、人と会えなくなるのは大変な苦痛でした。入るのに9年かかった大学で、実現できた夢の生活の1/8が奪われる。きっと大学の友人や、他大学の学生も、私と同じような感情を抱えておられるのではないでしょうか。辛い受験生活を乗り越えて新しい生活に心躍らせる1年生、大学生活に慣れてきて、よりより生活に期待が増す2年生、サークルの最高学年として、集大成を見せるぞと気合の入る3年生、希望企業に入るための就活に奮闘する4年生…。希望に燃える若者の学校生活を、一生の思い出を、そして未来を、コロナは奪っていきました。

 

もし、秋になってもコロナが収束していなければ、大学に通えない期間がもっと長くなるかもしれません。私はどうすることもできずに塞ぎ込みました。思い出したくなかったあの暗い受験期のような、先の見えない毎日が再び蘇ってきました。それは、私以外の同級生や、他大学の学生、ひいては社会人の方々も例外ではないでしょう。

 

緊急事態宣言に至るまでの私は、やることがないので朝から晩までTwitterを開き、少しでも明るい話題をツイートしようとダジャレや面白おかしいエピソードを考えて投稿していました。しかし、今の世の中ではそうした呟きをすることすら反感を買うのではないかと思い、はばかられます。営業していた店は次々に臨時休業を発表し、私が生活の場として重用していたジムや、作業をしていたドトールカフェも閉まってしまいました。三畳の部屋で、何もせずに寝転がることしか私にはやることがなくなってしまいました。

友人の投稿やリツイートされた投稿を見ても、暗い話題で埋まっています。政治不信の高まり、感染者への非難、情報操作により言われのない誹謗中傷を受ける人たち。国家全体を覆う危機に対する不安を吐き出す場所として、まさにここは日本の悪い部分を凝縮しているように思えました。

 

現在、国民全体がイレギュラーに直面し、余裕をなくしているように見受けられます。増えゆく感染者に怯え、いつ自分や家族に火の粉が及ぶかと身構える状況が続いています。私の出身地である兵庫県でも、300名を超える感染者が出ており、住んでいた丹波市でも感染者がいると聞きました。今もなお、地元に残した母親が不安で寝ることもままなりません。母は、10歳の頃に倒れた父親の代わりになるため毎日働いて、それでも年収200万円前後がやっとという苦しい家計の中で、わがままを聞いて何度も高額な私立大学に行かせてくれました。陳腐な言葉では表現できないほど、感謝しております。

 

母以外にも兄妹や、地元にいる時にお世話になった方々、言いようのない不安に晒されている人たちのために何かできるのではないか、何かをしないといけないのではないかと思った私が知恵を絞って考えたこと、それがマスクを地元である兵庫県に寄付させていただくことでした。東京の感染者数に注目が集まっていますが、これから地方での陽性者も増えていくと思います。各地方自治体はマスクの供給不足に陥るでしょう。今ですらもう、病院や高齢者施設へ届けるには絶望的に数が足りていないのではないでしょうか。だから、少しでもお世話になった場所の感染予防のお役立ちをしたいと考えたのです。

 

万単位でマスクを届けるニュースが日々日本を騒がせている中で、私の行動はそれ自体にあまり大きな効果はないのかもしれません。自己満足でしかないのかもしれません。しかし、社会的に弱者である一学生の行動が、身動きの取れない全国の若者を照らす一筋の光明になれば嬉しい、そう願い今回の行動をとるに至りました。私は学生の身分でありながら、社会人を経験したことがあり、行動自体に説得力を持たせることができると思います。今、全国の若者は身動きが取れず、何もできずにもどかしい思いを抱えているはずです。でも、これから日本が立ち直っていくためには、未来ある若者が動いていかねばなりません。だからこそ、非難を承知の上で私に続く若者が出てくることを祈り、こういった行動を取らせていただきました。

 

日本に光を灯しましょう。

 

令和2年4月12日

 

早稲田大学教育学部国語国文学科三年生

濱井 正吾